アラスカ物語 を読んで

アラスカ物語(新田次郎) 晴耕雨読(書評)

【タイトル】アラスカ物語                                                                    

【著者】新田次郎

【出版社】新潮文庫(2026.4.30.発売)

 極地に暮らす(活動する)人たちは皆、一葉に辛抱強く事態を捉え、思考を繰り返しながら生活している(生きている)様に感じられ、「気づき」としてとても勉強になる。極地と言う極端な自然環境のなかで、狩猟をして日々生きてゆくということは、我々現代人の「予定された生活(貯蓄)」の中で生きている人間と思考が違うのも当然である。

 そんな私の極地遍歴は角幡雄介さんの「極夜行」から始まった。植村直己さんや大島育雄さん、荻田泰永さん、南極のアムンセン、スコット、本多勝一さんなどの著作を読み、極地の世界と言うものに傾倒し、また極地に生きる人たちの物語に惹かれていった。

 本著、アラスカ物語は、栗秋正寿さんの著作「アラスカ垂直と水平の旅」の中で紹介されており、気になっていた本である。

 フランク安田(安田恭輔)と言う極東からやってきた日本人が、カナダの極北の地で白人、エスキモー、インディアンと文化の異なる人々を巻き込みながら、生きるためにその人生をかけて奔走する実話であり、18世紀初めのゴールドラッシュに沸くユーコン川周辺の鉱山にまつわる話など、波乱万丈な人生劇としても、とても興味深く、内容の濃いストーリーである。

 フランクがまだ安田恭輔として宮城県石巻町で過ごした孤独に満ちた青年期、日本を離れ極北の地ポイントバローでの沿岸エスキモー達との生活、その後に襲う食料不足や疫病による危機からブルックス山脈を越え新天地へ移動を決意し、ユーコン川畔のビーバー村でその人生を終えるまで、幾多の困難が彼(彼ら)の前に立ちふさがる。フランクはその試練を常に辛抱しながらもジリジリと根気強く歩を進め、自分たちが生きるために道を切り拓いて行く。

 明治初期に生まれたフランク(恭輔)は、格によって家柄を判断し、差別や格式を重んじる風習が残る日本で、良い事も悪い事も経験し、日本を立ってからも、働く船上にて不当な扱いを受けるなど、差別が蔓延る時代に生きており、彼の過酷な人生にはその様な時代背景も大きく影響していたと想像する。

 ただ、物語は辛いこと、悲しいことだけに終始しているのではなく、フランクの人生の転機となる出来事を呼び起こすキーパーソン達が要所で現れ、彼の人生を憂いあるものに導く。

 それは沿岸警備船ベアー号での船長ワーレス、エスキモーの住むポイントバロー交易所のブロアー、カレギの親方、若い衆であり、伴侶となるネビロ、その後に会う鉱山師カーター、金鉱に働き口を求めてきたジョージ大島、ジェームス・ミナノ…

 皆、フランクの人柄(性格)、行動に惹きつけられ、フランクだけでなく、彼らの人生と言う長い旅が彩られていく。

 彼が行ったことは、その地に住む者が、自分たちの手(狩猟)で、自分たちの食い扶持をて暮らしていける、そんな経済を作る事であった。日本から来たフランクの考え(文化)が、極北のエスキモー達にはそぐわないと感じると、無理を強いるのではなく、彼らに適切な良策を講じる。100歩譲るのではなく、この先の事を考えるとここまでは必要だ、という折衷案の様な落としどころで推し進めてゆく。現代で言うところのネガディブ・ケイパビリティに優れた、リーダーシップを持った人材であったと感じる。

 自然で生きる、ということはそういうことなのかもしれない。人間の想定することに、自然は同調してはくれないので、その中で人間は自然に恐怖を感じながら、ジッと我慢をして、その大きな力が過ぎ去るのを辛抱強くまつのである。その中で命を落とすこともありえる。その悲しみの繰り返しで得た生き抜くための知恵を蓄えてきたのだと考える。

 そう考えた時、先述の極地を旅する探検家たちは、自分(人間)の力で、自然と対峙し、その大自然の畏怖をも受け入れて生きてゆくということを実践(模索)しているのだと思い、結果、このアラスカ物語に出会い、大きく惹きこまれたのだと、合点がいったのである。

 アラスカに流れるユーコン川にはホワイトホースからカヌーで川を下り、道中の河原や中洲で野宿(キャンプ)をしながらその大きな自然を満喫するフィールドが今も残っているという。野田知佑さん著作「ユーコン川を筏で下る」を読んで、私の中でカヤック(カヌー)熱が再燃している。

 鉄は熱いうちに打て…と言うが、私の今の生活、この先の人生、懐情も含め、ここはフランク安田の様にじっくりと思考を凝らし、今をどう行動するべきか考えていこうと思う。(計画や資料集めはAIに任せているといこの矛盾…)

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